沢村凛

『ヤンのいた島』 沢村凛

1998年発行
沢村凛さんの‘日本ファンタジーノベル大賞優秀賞’を受賞した作品です

これは、ファンタジーなんだろうか?

ヤンは妖精か何か?
それとも、未開の地に暮らす子供?
事前の知識がなく読み始めたので
タイトルと表紙を飾るかわいい小島の絵から勝手にそう予想していた

瞳子は高校生の時、図書館で『鼻行類』という本に出会う
学術的な報告書のようでありながら、空想の生物を紹介したもの
その本に魅せられた瞳子は、紹介されている鼻行類の中でも
「ダンボハナアルキ」だけは実在しているという記事に触れ
運命を感じて理学部生物学科へ進学、ヨーロッパの小国Z国への留学
そしてついに小さくて地図にも載っていない
Z国の旧植民地イシャナイへという小島国の学術調査団に参加する
そこに行けば「ダンボハナアルキ」に会えると信じて
ところが目指すイシャナイの小さな島は、内戦激しいゲリラの島
こっそり調査団のテントを抜け出した瞳子は
結局、ゲリラに拉致されて彼らと行動をともにし
熾烈極まりないゲリラ戦に巻き込まれていく
そのゲリラたちの指導者がヤン、見た目は30歳ほど
妖精でもかわいい子供でもなかった
不思議なのは瞳子とヤンのつながり
2人は同じ夢を見る
それは今とは違う、3つのかたちのイシャナイの現状
今とは違う選択をした場合の、イシャナイのその後
南国のリゾート地イシャナイ
いにしえと変わらない素朴な暮らしのイシャナイ
植民地化されたイシャナイ
それぞれのイシャナイと、内戦激しい現実のイシャナイとでは
本当はどれが良かったのか
それぞれの夢にでてくるヤンは、ヤンであっても彼自身ではない

そして戦いは最終局面へと向かう

その後、ヤンは、ゲリラたちは、イシャナイは果たしてどうなったのか・・・
お話はここでおしまい

どうして、ヤンと瞳子は同じ夢を見るのか
瞳子をその国まで導いたものは何だったのか?
「ダンボハナアルキ」は?

わからないことだらけで終ってしまった

「ダンボナハアルキ」は必要なアイテムだったのかさえ疑問に思えてきた
いっそのこと
この未知の愛らしい生物、ゲリラたちのストーリー、ヤンの存在
それぞれを3つのお話に分けてしまったらどうだろうか?
おそらく、どれも興味深いお話になると思うのだけど

     2003年12月記 



© Rakuten Group, Inc.